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新聞記事に見る 日本語表現と英語表現


便利な for の用法

熊本・相良村の周辺で野鳥調査
環境省は十九日、熊本県相良村で見つかったクマタカ一羽から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が検出されたのを受け、 同日から二十五日にかけて現地で野鳥調査を実施すると発表した。同省職員と県が合同で実地調査を行い、鳥取大学が結果を分析する。 同省によると、調査の分析結果がまとまるのは四月上旬の見通し。(後略)
出典 日本経済新聞 2007年3月19日 夕刊 18面

「結果を分析し、その分析結果を報告する」というプロセスはありうることだが、短い間隔を置いて、同じ言葉を反転させて繰返すのは稚拙な表現であり、 さらにこのような表現では「(鳥取大学が)結果を分析する」ことは何を行うのかわからなくなる。
他の報道から考えると、「鳥取大学がウイルスを分析する」のだろう。だから単に、「調査の結果がまとまるのは」と2回目の「分析」を除外した方がわかりやすい。 そうすると、(野鳥)調査、(ウイルス)分析、(総合)結果 と流れが明確となる。

「ウイルスを分析する」にある”を”は目的格であり、この場合、分析する対象物を示す。英語で表現すると   (1) They analyze viruses. (2) They analyze for viruses. の両方が可能である。analyzeは自動詞としても他動詞としても使用できる。 一層相明確に他動詞として使用するなら (3) They analyze the specimens of viruses. となる。

(1)では分析の対象そのものがウイルスであるのに対し、(2)のように for をつけることによって、ウイルスを求めて という意味が加わり、 結果としてウイルスが検出されなかった場合も含めることができ、便利な用法だ。

日本語ではこのような区別ができないのが残念だ。この点まで込めると、「鳥取大学がウイルス分析を担当する」とすれば少しは”未検出”の可能性が込められる。