書評 現代哲学のキーコンセプト 確率
「現代哲学のキーコンセプト 確率」 ダレル・P.ロウボトム 著 佐竹祐介 訳 岩波書店 2019年6月刊 の書評を
Amazonカスタマーレビューに
投稿した。
ここでは、Amazonカスタマーレビューに書かなかったこと(字数に配慮などで)を補足する。
内容は ベイズ主義の位置づけ
Book データベースに記載された内容が 「(確率の)概念の意味と主要な解釈を平易に解説する」だけで、あまりにも不明瞭だったので、
「確率値にどのような数値を割り当てるのが妥当か(の議論)」とし、主要な区分(本書の裏表紙に”章”建て項目として記載されている)を少し紹介した。
実際、私は本書購入時に内容を全く把握していなかった。
しかし後で考えるならば、科学哲学分野で”確率”といえば、いわゆる”頻度主義”と”ベイズ主義”の両者の論争(攻防?)が大きな課題であり、
当然、それに纏わる”論”と考えるのが普通なのかもしれない。解説の一ノ瀬氏によると、原著者は 「やや”客観的ベイズ主義”に好意的」 という位置づけのようだ。
欧米の大学・大学院の教育、考え方 vs 知識
本書の要点を 「理論展開から、欧米人の考え方を学ぶことができる好書」とした。
ビジネス書の類で、「論理的思考」とか、「ハーバード/オックスフォード大学の授業。。」等のタイトルを目にすることがある。中身はお題目の羅列であることが多く、
それはそれでも良いのかもしれないが、実態を会得するのは難しいだろう。
欧米の大学・大学院の授業では知識を与えることだけでなく、考え方を習得させる授業だと指摘している書も多い。では、「考え方を学ぶ」と ”理解”したら、
その考え方が学べるのか? それは甚だ遠い。
本書の様な具体例を伴い、順次”誘導される”プロセスこそ、考え方を学べる機会なのだ。もちろん、特定のtutorのもと に加え、
ヘテロな(多様な)tutorsのもとで。幸い大学・大学には多くの授業科目が準備されている。
残念なのは、本書が”ビジネス書”と並ぶことは無いだろうから、そうした人達の目に触れる機会は少ないだろうことだ。
自然科学分野で英語学術論文を書く人、書こうとする人へ
この欧米人流の考え方の重要性を最も切実に痛感するのは英語の学術論文を書こうとするときである。現在の科学・学問体系は、
それを築き上げてきた欧米人流の考え方が色濃く反映されている。これが私の約30年間の研究活動から得たことで、
最終セミナーでも強調した。
また 2012年年賀状でも一端を記した。
このWebサイトの「科学の論理」あるいは「科学の周辺」でもっと詳しく書きたいと思っていることである。しかし遅々として進まない。